舎利幹と神(ジン)は、真柏に限らず松柏類一般に見られる観賞のポイントであり、魅力である。 しかし真柏のそれは格別である。 むしろ他の松柏類では舎利やジンをもたなくても不思議はないが、真柏では舎利やジンを有しないボンサイは奇異にさえ感じられる。 つまり真柏の舎利とジンは欠かすことのできない要素であり、水吹いと緑葉との三位一体となっているのだ。 それだけに、舎利幹の清潔感が重要視される。 とくに山採り真柏の舎利やジンは、入為ではなかなか創作できない白然の妙味ともいえる造形美を誇っている。 そこに手を加えざるを得ない場合は、白然感を表現するためにさまざまな用具が用いられている。 本来、あるべきではないところにある枝はボンサイでは嫌われる。 逆にあるべきところにない枝は望まれる。 真柏の場合、そうした制約から解き放たれた特異な樹種といえよう。 とくに捻転する幹と水吸いは、どの部位からどんな分岐を見せようとそれが許されるほどの、白由闇達で奔放な動きを示している。 素材は人為的に仕立てられた素材であり、小枝のない、しかもコケ順の乏しい徒長した枝をもっている。 このままではとてもボンサイとし しかし前述の真柏の特性から、この直線的な徒長枝を白由に曲付けすることが可能であれば、話は別である。 通常、ここで示した手繰りの技法は他の樹種ではごまかしの技法として嫌われる。 しかし真柏ではこの技法の採用は許されるのである。 かといって写真のような極端な曲付けは、いかに幹に粘性のある真柏といえども、そう容易ではない。 ことに写真の素材はかなりの太さをもつ徒長枝である。 単に太い針金をかけてもそう容易に曲げられるものではない。 部分的に幹に割を入れることによって曲げやすくする工夫が施されている。 樹に加わる負担はかなりのものが想像されるが、真柏にはそれに耐える強靱な樹性が備わっているのである。 いずれにしてもこうした技法は一種の荒枝であり、素材作りのプロの技であるから、趣味家がすぐに真似できるものではない。 あくまでも真柏の特性を知るうえでの参考にしていただき、樹形づくりに応用されたい。 |